代表理事挨拶

NPO法人農音に関心を持って頂き、ありがとうございます。

20代は東京でフリーターをしながら、バンドマン生活を満喫していました。折しも、世間ではニートやフリーターの増加についての問題意識が高まり、私自身を含め音楽仲間の間で、今後の生き方を模索する風潮が強まっていました。
そんな流れの中で着想を得たのが、この農音という発想です。
大まかに言うと、都市部で満足度の低い生活を送っている若者が田舎へ移住し、過疎高齢に悩む田舎は、若者の流入により活気を取り戻すという仕組み作りです。

ITの普及により情報面では都市部のアドバンテージが絶対的なものではなくなってきたことも後押しとなり、“老後の夢”ではなく“現在の生き方”として田舎暮らしを求めている人が予想以上に多いことも分かってきました。

現在は愛媛県の中島という離島に絞り活動を行っています。ここで試行錯誤を踏まえて地域活性のモデルを形成し、他地域へと活動を広げていくのが狙いです。
これまで閉鎖的・保守的と捉えられてきた田舎ですが、実際に移住をして、島の方々からの心温まるご支援とともに期待や感謝の声に触れる機会も多くなり、改めて確かな必要性を感じています。
そんな島の方々のご期待に応えるべく、『意義のある移住促進や地域活性とは?』ということを、島民や移住者の声を聞きながら模索しています。
これらは同時に、久しくスポットライトが当たることのなかった田舎ならではの生活が、都市部から来た若者に非常に良い精神衛生上の結果をもたらしているようにも感じています。

このように都市部と地方をWIN-WINの形で繫いでいくことが、引いてはニッポンの地力を高めていく方策として、おそらく今以上に必要とされ始めるでしょう。
今はまだ都市部の人口過密問題に対する自然発生的なカウンターカルチャーに過ぎませんが、これからの時代を担う民間主導の活動にしていければと思いますので、ご支援・ご協力頂ければ幸いです。

NPO法人農音 設立趣旨

1.趣旨

1960年代の高度経済成長期に端を発する首都圏への人口集中が、現在、地方に深刻な弱体化を招く結果となっています。世界経済そのものが先行き不透明な昨今において、この問題の解決策を見出していくことが今後の日本社会の在り方を考えるうえで避けては通れないテーマであることは間違いないでしょう。
全国的に地方自治体における過疎高齢化が問題視されて久しいにもかかわらず、他地域から若者を呼び込んでその打開に成功しているのはほんの一握りという現状。
また、その一方で人口過密になった都市部では、20代の若者から働き盛りの世代まで、多くの人々が自己実現や豊かな暮らしとはほど遠いストレスフルな生活を余儀なくされ、その副産物ともいえる精神疾患など新たな問題を生み出しています。

かつて、都市部からは一面的な情報が地方に流れ、人々はあたかもそこが「望む物すべてが手に入る夢の都」であるかのような幻想を抱きました。しかし今、地方の農村には手つかずの自然はもちろんのこと、食料自給の可能性や昔ながらの人情など、現在の都市部では得がたい魅力が多くあります。地方の農村での生活は確かに収入の面では低迷し、自然を相手にする不確定さから一般の会社員と比較すればやはり不安定です。しかし収入ベースではない生活の在り方を模索する人々にとっては、過去50年間に軽んじられてきた本当の意味での安心や充実、幸福に満ちた環境があるのです。

これらを口コミだけでなく現代に於いて強力な情報伝達ツールとなりつつあるweb等も活用し発信していくことで、地方の生活の良さに人々が気付き、都市部から地方へと向かう人の流れを生み出せるのではないかと考えました。
我々農音の活動としては、まず地方の魅力とともに農地や空き家の情報を収集して提供し、都市部からの移住希望者が移住を完了するまでに超えなければならない障壁を最小限に抑えることで、移住促進を図ります。次に、要望に応じて移住地域での働き口を紹介したり、移住先で農業に従事する方に対しては音楽を絡めて農作物のPRや販売を行うなどして、移住後の収入確保のサポートをしています。
このような取り組みの中で我々は、必ずしも地方に新たな価値を生み出していくことにこだわってはいません。逆に都市部の若者に対して、かつての日本人が持っていたであろう価値観を、彼らに伝わりやすいような新しい形で提唱することによって共感者を募ったり、ターゲットを絞ることでよりニッチにニーズの掘り返しを行い、より地方での生活とのマッチ度が高いと思われる人々を呼び寄せることによって、過疎化が進む地方における生産世代の人口回復を図ることを第一の目的としています。また二次的三次的には、移住者の経済活動の拡大による緩やかな地域の生産力の拡充、ひいては大規模な地域振興を目指しています。

構想から4年。プロ、アマチュアを問わず首都圏を中心に活動していたミュージシャンに呼び掛けて参加者を募り、任意団体として活動を始めてから2年半。第一の地として選んだ愛媛県松山市中島での移住促進活動開始から1年を経て、すでに20人を超える移住者の呼び込みに成功し、農産物の生産、販売でも少しずつ結果が出始めています。これから更なる移住促進と並行して、団体名義での農地の貸借と加工事業も含めた6次産業化、さらには農業に留まらず移住者の多様なライフスタイルをサポートするための新事業を展開していきます。つきまして、法人格の取得が急務となりました。
取り組みの大部分が公共の利益に寄与することを前提とし、会員は利益を度外視したボランティア活動にも従事しておりますので、会社法人の形式よりも特定非営利活動法人の設立がふさわしいと考えています。

2.申請に至るまでの経緯

東京近辺で活動していたミュージシャンたちが、「田舎への集団移住」という着想を得て、2011年に任意団体(広義でのNPO)農音を設立。設立当初の賛同者が段階的に移住すると同時に、音楽を通じたPR活動を行い新規の移住者を獲得。移住者への農地やその他の仕事、住居の斡旋などを行い、活動を拡大してきました。

移住者の増加にともない、新しい事業への進出を予定しておりますが、任意団体のままでは社会的な信頼度に乏しく、また参加者への負担も大きくなってきたことから、移住促進や地域新興のより力強い活動に向けて新体制を整えるため、NPO法人への法人化を検討し始めました。